東北再生経済研究所

再生だより

復興財源の地元負担がもたらすもの

 復興庁は2015年5月12日「集中復興の総括と28年度以降の復興事業のあり方」を発表した。復興の基幹的事業、原子力災害については地元負担ゼロとしたが、地域振興など全国共通の課題には自治体負担の導入を明確にした。宮城県の村井嘉浩知事は「社会資本整備総合交付金などのハード事業に地元負担を導入するのは遺憾だ」と批判、復興事業の後退を懸念した。首都直下型、東海、東南海、南海トラフと巨大地震が想定されている中で、強靭化対策が縮小されていくとしたら、失われた命は何だったのか。減災、防災の手立てを打つことが命を守ると同時に、結果的に財政健全化にもプラスになるのだが。(伊藤裕造)

「東松島みらいとし機構」の挑戦

寄稿東北大学大学院経済学研究科教授・大滝精一

東北大学大学院経済学研究科教授・大滝精一

 みらいとし機構は創造的な復興まちづくりと内閣府選定の環境未来都市の二つを合わせ、創造しようという一般社団法人の非営利組織。英文の頭文字を取るとHOPEになり、4部会16事業を実施する。くらし部会は木化都市を構想、木づかい街なみを創る。産業部会では矢本地区に建設する道の駅を拠点に、6次産業化事業を進める。コミュニティ・健康部会は災害に強いネットワーク拠点づくりや地域包括化サービスなどを企画している。エネルギー部会では太陽光発電の推進を始め、木質バイオマス燃料の生産など自立分散型エネルギーの供給などの事業が進められている。「CSRからCSVへ」と言われているが、企業のCSR(社会的責任)だけを当てにせず、収益を獲得できるCSV(共通価値の創造)を目指すべきだ。

新国家戦略特区で起業の促進

寄稿仙台市まちづくり政策局政策企画部プロジェクト推進課長・畑中雄貴

仙台市まちづくり政策局政策企画部プロジェクト推進課長・畑中雄貴

 仙台市は「女性活躍・社会起業のための改革拠点―」として、国家戦略特区の取り組みを進めている。社会起業では、NPO法人の設立認証で申請書類の縦覧期間を2カ月から2週間に短縮し、早期設立を可能にするとともに、労働紛争を未然に防ぐために「雇用労働相談センター」の設置も進める。さらに、女性起業家などの活躍を促すため、地域限定保育士を創設するほか、都市公園内の保育所設置を認める。ハリケーン・カトリーナ後のニューオーリンズなど大規模自然災害にみまわれた地域では、復興過程で社会起業が増える傾向があるが、震災後の仙台市でも同様の傾向が顕著に表れており、この動きを加速し、被災地からの新しい経済成長モデルを示したい。

45フィートコンテナ特区がもたらしたもの

 震災直後の2011年3月25日、宮城県が申請していた45フィート(ft)コンテナを走行できる「構造改革特区」が認められた。ISO(国際標準化機構)で2005年に45ftまで認めたが、日本では道路法などで40ftまでだった。
 1.5メートルの違いだが積載量は27%も増やせ、米中間では威力を発揮し始めている。そのため、東北7県の産官学で「東北国際物流戦略チーム」を創り、実験を重ねて、いよいよ認可というときに東日本大震災。仙台港は言うに及ばず、調達したオランダ製シャシーも壊れたが、この認可をもとに同年9月15日、北米向けの45ftコンテナが出航した。その後、宮崎県、三重県も特区が認められ、ついに今年6月からは全国に認められ、特区そのものが必要なくなった。本来、規制改革はこうあるべきだろう。(伊藤裕造)