東北再生経済研究所

再生だより

来年度(2015年度)復興予算の注目点

 東日本大震災特別会計予算は総額3兆9087億円で、前年度当初比で7.19%増になる。その中で注目を集めたグループ化補助金が2015年度から「新分野需要開拓等を見据えた新たな取り組みを支援する」ことができるようになった。日本の災害復旧は原形復旧が大原則だったが、それに風穴を開けた措置だ。時代が急速に変化している時に、元に戻すのではまさに時代遅れ。「新しい需要にこれで対応できるはずだ」と復興庁。阪神淡路大震災の時、倒壊した高速道路を地下化する計画が検討されたが、この原則で葬られたという。これで効率化ができず、震災以前は世界3位だった神戸港は、釜山に奪われ、今や52位。これで「神戸港の二の舞」は避けられるか。(伊藤裕造)

木材の太陽熱乾燥システム

寄稿宮城県登米町森林組合総務課、森林利用課課長・竹中雅治

宮城県登米町森林組合総務課、森林利用課課長・竹中雅治

 宮城県では災害公営住宅を木造で建設する取り組みが進められている。地域の関連事業者が共同で行うもので、その木材を乾燥するシステムに「太陽熱木材乾燥庫(ToSMS・トスムス)が導入された。灯油などの化石燃料を使わず、太陽熱を効率的に使い、二酸化炭素の排出を削減する。原理は、南側傾斜面に設置したトタン板で温風を作り、ファンで庫内に押し込み、さらに天井の集熱パネルで庫内の空気を常時循環させる仕組み。これを設置した宮城県登米町森林組合では「農林産物の乾燥にも威力を発揮している」という。復興庁の「新しい東北」の先導モデル事業にもなり、地球温暖化対策の切り札の一つと言える。

よみがえった二つの湾の牡蠣

畠山重篤さん
畠山重篤さん
小島昭特命教授
小島昭特命教授

 大震災後、瓦礫に埋まった三陸沿岸の牡蠣は全滅したと多くの人が悲観した。それが宮城県の気仙沼湾は1年後には、甦っていた。かつて湾に注ぐ大川に計画された新月ダムを「森は海の恋人」を主張する畠山重篤さん達水産業者の皆さんが中止に追い込み、森と海の結びつきを守り抜いた成果だ。室根山で植樹を続けてきた相乗効果でもある。
 岩手県の山田湾では、群馬工業高等専門学校の小島昭特命教授を中心に、鉄分供給剤を養殖筏に吊り下げ、植物プラントを増やし豊かになった海が、牡蠣の成長を促進させたからだ、という。このような試みが東北沿岸、さらに日本全体に広がれば、水産資源の維持、増大につながるであろう。(伊藤裕造)